行政不服申立て

違法・不当な行政活動に対して、
異議を申し立てたり、審査・再審査や処分取消を求めることは国民の大切な権利です。

こんなことはありませんか?

行政不服申立て
  • 土地区画整理事業に伴い、土地区画整理組合や市町村、都道府県等が行った仮換地指定処分や換地処分に異議がある。
  • 固定資産税の徴税額に納得がいかない。

行政機関による行政活動が多岐にわたり、その活動が常に適法・妥当に行われているとは限らず、違法・不当な行政活動から国民の権利・利益を守るための法制度として、行政救済法が整えられています。行政救済には、広くは、行政行為の事前手続きとしての行政手続きも含まれ非常に重要ですが、一般的には事後的な救済制度を指します。これを大きく分けると、(1)金銭によって救済を図る国家補償、(2)行政処分を取消・変更する行政訴訟、(3)その他の苦情処理の3つがあります。

当事務所では、様々な行政不服申立について法律のプロフェッショナルとして的確にサポートします。ぜひご相談・ご依頼ください。

国家補償制度の場合

金銭によって救済を図る国家補償制度は、大きく分けると、国家賠償と損失補償の2つになります。

1 国家賠償制度

国家賠償制度は、違法な行政活動によって生じた国民の損害を国家に賠償させることにより、国民の権利救済を図るものです。憲法17条に基づき国家賠償法が制定されており、国家賠償の一般法となっています。

2 損失補償制度

損失補償制度は、必ずしも違法・不当とは言えない行政活動により生じた損失が、国民の特別の犠牲であると言える場合に、国家に補償させることにより国民の権利救済を図るものです。憲法29条3項又は個別の法律が、この請求の根拠となります。

行政争訟制度の場合

行政処分を取消・変更する行政争訟制度は、大きく分けると、狭義の行政争訟(行政不服申立)と行政事件訴訟の2つになります。

1 狭義の行政争訟(行政不服申立)

狭義の行政争訟は、行政機関の違法・不当な行政行為(処分)に対し、その取り消し、その他の変更を求めて行政機関に不服を申し立てるものです。行政機関が迅速かつ簡易に救済を図ることが期待されるもので、一般法として行政不服審査法があります。

(1)不服申立の種類

  1. 異議申立
    • 行政行為(処分)をした行政庁(処分庁)又は不作為に係る行政庁(不作為庁)に対する不服申立で、これに対する行政庁の判断を「決定」と言います。 この申立ができるのは、a.処分庁に上級行政庁がないとき、b.処分庁が主任の大臣、宮内庁長官、外局の長、外局に置かれる庁の長であるとき、c.法律により異議申立することができる旨定められているときです。

      ただし、a、bの場合であっても、法律・条例により第三者的な行政機関への審査請求が認められる場合には、原則として異議申立はできません。

  2. 審査請求
    • 処分庁又は不作為庁以外の行政庁に対する不服申立で、異議に対する不服申立であっても、原処分に対する不服申立として扱い、審査庁の判断を「裁決」と言います。

      処分庁に上級行政庁がある場合は、原則として直近の上級庁に対して審査請求を行うこととなっており、これを審査請求中心主義と言います。これは、上級庁の審査の方が公正な審査が期待できるからです。

  3. 再審査請求
    • 審査請求の結果(裁決)に不服がある場合に、更に行う不服申立です。法律又は条例に定めがある場合にのみ認められます。この場合は、原処分を争うか、審査請求の裁決を争うかを選択することができます。再審査庁の判断も「裁決」と言います。

      (注)不作為に対する不服申立
      この場合は、異議申立と審査請求のいずれかを自由に選択することができます(自由選択主義)。もっとも上級行政庁がない場合には、異議申立しかできません。

(2)不服申立期間

  1. 処分に対する異議申立・審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければなりません。
  2. 異議申立後の審査請求・審査請求後の再審査請求は、決定・裁決があったことを知った日の翌日から起算して30日以内にしなければなりません。
  3. 処分(異議申立に対する決定があった場合は決定、審査請求に対する裁決があった場合は裁決)があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、不服申立ができなくなります。

(3)教示制度

行政庁は、不服申立ができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に、当該処分に不服申立ができる旨・不服申立をすべき行政庁・不服申立期間を教示しなければならないことになっています。

(4)不服申立に対する判断

  1. 異議申立………決定、
    審査請求・再審査請求………裁決
  2. 却下………不服申立が手続き上の要件を欠く場合
  3. 本案判断
    • 認容………申立に理由があると判断されるとき
    • 棄却………申立に理由がないと判断されるとき

(5)執行不停止の原則

不服申立が提起されても原則として、処分の効力、処分の執行又は手続きの続行を妨げられません。

ただし、例外的に審査庁が執行停止をしなければならないという場合もありますが、いったん執行停止になった場合であっても審査庁は必要によってそれを取り消すことができます。

2 行政事件訴訟

行政事件訴訟は、行政機関の違法・不当な行政行為(処分)に対し、その取り消し、その他の変更を求めて裁判所に不服を申し立てるものです。憲法32条の裁判を受ける権利に基づくもので、一般法として行政事件訴訟法があります。

(1)行政訴訟の類型

  1. 主観訴訟………国民の権利利益(主観的利益)の救済を目的
    • a.抗告訴訟………行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟
      • (a)取消し訴訟
        • 処分取消の訴え………行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消
        • 裁決取消の訴え………審査請求・異議申立その他の不服申立対する行政庁の裁決・決定その他の行為の取消
        • 取消訴訟の対象要件
        • 原告適格・被告適格要件
        • 訴えの利益要件
        • 管轄裁判所要件
        • 出訴期間要件
        • 取消訴訟の利用方法を教える教示制度
        (b)無効等確認の訴え
        処分又は裁決の存否又はその効力の有無の確認をする方が紛争解決に役立つという場合に、その確認を求める訴訟ですが、その原告適格を大幅に制限し、「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達成することができないもの」を要件とします。
        (c)不作為の違法確認の訴え
        行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分または裁決をなすべきにもかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟です。
        (d)義務付けの訴え
        行政庁が一定の処分をすべき時、法令に基づき行政庁に一定の処分又は裁決を求める申請又は審査請求がされたときに、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにも拘わらずしないとき、その処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟です。
        (e)差止めの訴え
        行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにも拘わらず、これがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟です。
    • b.当事者訴訟………対等な当事者において公法上の法律関係に関する紛争の解決を求める訴訟です。
      • (a)形式的当事者訴訟

        当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法令の規定により、その法律関係の当事者の一方を被告とするものです。

        (例)土地収用の損失補償の額を争う訴訟では、被告は権利取得裁決をした土地収用委員会ではなく、当事者の一方(起業者又は所有者)で、実質的には土地収用に関する争い。

  2. 客観訴訟………客観的な法秩序の維持を目的
    • a.民衆訴訟
      • 国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟です。選挙人の資格や自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものですが、法律に定める場合において、法律に定めるものに限り提起することができます。

        (例)選挙に関する訴訟、住民訴訟

    • b.機関訴訟
      • 国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争の解決を求める訴訟です。

その他苦情処理の場合

行政上の苦情処理制度は、行政機関及びその委託を受けた者が、国民からの行政活動に関する苦情申出を受理し、行政機関内部で必要な措置をとるというものです。

例えば、国では、総務省による苦情に基づく行政監察・行政相談委員や、地方自治では「市民相談窓口」等の市民相談を受け付ける部署があります。これは、行政不服審査法に基づく行政不服申立と異なり、手続き上の制約が少なく、利用が簡便です。
また、行政機関としても、苦情内容の調査や関係機関への苦情内容の伝達・解決の斡旋等、柔軟な措置が取れるという面があります。

しかし、他方、これには法的拘束力や履行確保の手段はなく、また、行政機関内部における行政監督の一手段に過ぎないことから、その中立性・公正性に構造的限界があると言わざるを得ません。